超人スポーツ研究委員会について

超人スポーツ研究委員会の設置目的

本研究委員会は,人間のあらゆる機能(身体的・精神的・社会的)の補綴・補強・拡張を可能とする,Augmented Human(AH)技術に関する研究を分野横断的に実施する.そして特にスポーツ領域におけるAH技術に関する応用的研究ならびに自律的普及を通じて,人々の健康で文化的な生活への貢献を目指す.

研究委員会活動方針

本研究ではAHに関する基礎技術研究,スポーツを主たるテーマとした応用開発,そしてその一般社会への普及という3つの段階が想定されている.本研究の推進においては,ロボティクス,制御理論,義肢,ウェアラブル,脳科学,身体運動科学,インタフェース技術,メデイアアート,エンタテインメント,そしてバーチャルリアリティ/オーグメンテッドリアリティにいたるまで,幅広い領域における研究の推進・融合が不可欠である.一方で日本バーチャルリアリティ学会(VR学会)は,元来分野横断的な学術団体であり,前述の分野をほぼ網羅している.AHに関する研究を効果的かつ強力に推進する上では,もっとも適した学術組織であり,同時にAH研究の前進は,VR学会の学術活動全般の推進にも貢献しうるものであると考える.いかでは本研究委員会で想定する,研究の活動概要について説明する.前述の通り,本研究の推進に関しては三つの段階を想定している.

第一の段階は基礎となる技術の開発や,知見の獲得である.例えば従来は,不幸にして足を失ってしまった人に対して,その移動に関する機能を補綴する目的で,義足,あるいは車いすといった手段が開発され,提供されてきた.これに対して本研究委員会の中心的概念であるAHの観点では,本来の機能の回復という観点だけでなく,より速く歩ける,より高く跳ぶことができる,より美しく魅せることができる,など,本来の機能を超越した,拡張された機能の提供という観点においても研究を進めるものである.この実現にむけては,まず人間の機能拡張にむけた具体的・工学的・情報学的技術についての研究が必要であり,加えてその基礎として人間の特性に関する十分な知見の蓄積が求められる.さらにこのような人間に直接大きく影響を及ぼす技術については,社会的受容性,倫理的側面についても充分な配慮が必要であり,この点についても議論を刺激していく必要がある.このような形で,第一段階は「人間の拡張」の基礎的側面について多方面から研究を実施する. 

第二段階は第一段階の成果を受け,超人スポーツ種目の提案・開発を実施する.AH技術にとってスポーツとは,人への安全性,動作の信頼性などに対する要求が高い,過酷な環境である.この過酷な環境の中で使われることにより,AH技術はより洗練されたものになることが期待される.また,自動車研究とモータスポーツの関係を念頭に置くならば,開発されるスポーツは,技術のためのスポーツであってはならず,多くの人が楽しみ,自発的に関わることの出来る魅力を兼ね備えていなければならない.そして,AHを取り入れたスポーツにおける傷害危険性の理解・周知と共に,その危険性を最小限に抑えるための努力も必要である.このようなスポーツの提案・開発は学術研究の専門家だけでなく,多くの一般の人を巻き込んでいくことが求められる.すなわち,超人スポーツ種目の提案・開発は,AH技術の一般に対する普及・啓蒙活動という観点においても重要な活動となっている. 

そして第三段階は,第二段階の成果を受けて開発された超人スポーツ種目の,実社会への普及・定着である.これは研究成果の社会還元の最終段階であるといえる.具体的には超人スポーツ種目が経済的・技術的に自立して活動を継続できる状態実現することを目指す.これはすなわち超人スポーツを通じたAH技術の普及・啓蒙活動であり,同時にスポーツを通じた人々の健康的生活への貢献である.

そしてさらに長期的観点では,これら第一~第三の活動を常に繰り返し実施することで,いわば螺旋を描いて前進するように,多様なAH研究の継続的実現を目指す.